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コラム
2021/7/25
Cognitive assessment & enhancingのスタートアップ5選

 

はじめに

Cognitive assessment & enhancing は認知機能の評価と向上のことを指し、その技術は神経科学を応用することによって、何らかの方法で認知機能を評価し、さらにその評価した機能を向上させるような技術のことだ。

Neurotech を代表する 10 の技術 ~ 前半 ~ で紹介したように、認知機能は通常年齢とともに低下していくが、新しい神経技術によって脳の健康とパフォーマンスを向上させることが可能になり始めている。

 

瞑想、ビデオゲーム、スマートドラッグ、栄養補助食品、脳への刺激、運動、音楽、認知トレーニングなどの様々な活動により認知機能が評価・強化できることが、研究によって明らかになってきている。

認知機能を強化すると、脳の効率が上がり複雑な問題を解決したり新しい視点を理解したりすることができるようになるとされている。

Cognitive assessment

今回の記事では、代表的なスタートアップを 5 つ紹介しながらその技術の具体的な事例や市場規模を明らかにしていく。

1. MindStrong

MindStrong社は、スマートフォンのスワイプやタップといったアクションからユーザーのメンタルヘルスの状況を評価することができるバーチャルセラピーと精神医学的なサービスを提供している。現在はアメリカ国内のみの利用だが、健康保険プランを通して Mindstrong を利用する資格がある場合、すべて追加費用なしで自宅で快適にサービスを利用することがきる。

Thomas Mindstrong 動画: Thomas, 共同創業者 Mindstrong, TED Talk

共同創業者の Thomas Insel は NIMH の所長を 13 年間勤めた神経科学者だ。彼らの創業期のエピソードの一部はMIT Technology Reviewでも紹介されている。

ベリリは、うつ病や他の心の健康状態を知るためにスマホを使えないかと考えていた。しかし、インセル博士は当初、デイガム CEO の提案(実際のデータの提示はなく概念についてだった)を大したことないと思っていたという。「デイガム CEO の話を聞いても、ピンときませんでした」。

だが、打ち合わせを重ねるうちにインセル博士は、メンタル・ヘルス分野で今まで誰もなしえなかったことを、デイガム CEO が実現できるかもしれないと考えるようになった。デイガム CEO がスマホで集めた兆候が、人間の認知能力と強く相関することが判明したのだ。通常は、研究室で長期にわたる試験をしないとわからないような結果だ。さらにデイガム CEO は、何日にも、何週間にも、ついには何カ月にもわたって継続的にこういった兆候を収集し、人間の脳機能の連続的かつ客観的な監視を可能にした。

 

Mindstrong 動画: Mindstrong 紹介

Mindstrong はデータ測定、データサイエンス、バーチャルケアモデルの改善を通じて、メンタルヘルスの再構築に取り組んでいる。

業界メンタルヘルス
本社米国カリフォルニア州、マウンテンビュー
設立日2014 年
従業員数101 - 250
資金調達状況シリーズ C
合計調達額$160M
投資家数11
推定収益$1M - $10M

 

2. Neurotrack

Neurotrack社は、アルツハイマー病や関連する認知症のリスクを減らすためのデジタル認知健康ソリューションを開発している会社だ。製品は「認知機能テスト」と「脳ケアプログラム」の 2 種類があり、「認知機能テスト」は臨床試験で検証済みだ。PC によってリモートで実施可能であり、コンピュータの内蔵カメラを利用して視線解析を行いユーザーの認知機能を自動採点できる。「脳ケアプログラム」は、スマートフォンのアプリで認知機能テストが可能、得点などを見ることができ、今後はコーチングサービスも利用可能になる予定とのこと。

CEO の Elli Kaplan 氏のインタビュー によると、共同創業者のスチュアート・ゾラ博士は、エモリー大学医学部に所属しており、そこでの彼の研究がこれらの技術のベースとなっている。既にシリーズ C で 2100 万ドルを調達しており、高齢化が予測されている日本において損保ホールディングスや第一生命から出資を受け業務提携を行いサービスを提供している。

Neurotrack 動画: Neurotrack 紹介

業界認知機能の評価と強化
本社米国カリフォルニア州、レッドウッドシティ
設立日2012 年
従業員数11 - 50
資金調達状況シリーズ C
合計調達額$50.4M
投資家数15
推定収益$1M - $10M

 

3. Virtuleap

Virtuleapはポルトガルのリスボンに拠点を置く、健康と教育に関する VR スタートアップだ。彼らが提供する Enhance VR は、VR ヘッドセットを装着しミニゲームをすることでユーザーが楽しみながら記憶力や認知能力を強化することができる。その他にも、注意、問題解決、運動方向、運動技能、情報処理といったさまざまなテストを行うことができ、パーソナライズされたレポートで自分自身の成長を確認することもできる。

Viruleap 動画: Virtuleap 紹介

Virtuleap は VR や人工知能などの新技術の助けを借りて、認知機能の評価とトレーニングの業界を高めることを目指している注目すべきスタートアップだ。

業界メンタルヘルス
本社ポルトガル、リスボン
設立日2018 年
従業員数1 - 10
資金調達状況シード
合計調達額$1.1M
投資家数9
推定収益$1M - $10M

 

4. NeuroGeneces

NeuroGenecesは、最新の睡眠科学を応用して、睡眠が健康やパフォーマンスへどのように影響するかを明らかにすることに情熱を注いでいる企業だ。睡眠科学の進歩により、睡眠の質(深い眠りの時間)が睡眠の量(総睡眠時間)よりも重要であることがわかってきている。 NeuroGeneces は睡眠の質を高めることで記憶力、そして認知力が向上するスマートフォンアプリと IoT デバイスを提供している。現在その技術は特許出願中であり、睡眠クリニックで使用される睡眠ポリグラフ検査の 97%の精度を達成しているという。

CEO のカレン・クロウは経営コンサルティングの分野でキャリアをスタートし、Google でフォーチュン 1000 社の顧客に対するセールスオペレーションを担当し、500 人以上の従業員と 13 億ドルの年間売り上げを管理。その貢献と起業家としての功績が認められ、Google Founders Award を受賞している。

NeuroGeneces

NeuroGeneces from webpage

 

業界Neurotech
本社アメリカ・ニューメキシコ州、サンタフェ
設立日2016 年
従業員数1 - 10
資金調達状況プライベート・エクイティ
投資家数1

 

5. humm

カリフォルニア大学バークレー校のアクセラレーションプログラムを卒業したhummは、記憶力を向上するウェアラブルパッチを開発しているスタートアップだ。最先端の神経科学の手法である経頭蓋交流刺激法(tACS)を利用し、15 分着用すると脳内の電気信号の強度が一時的に高まりワーキングメモリと呼ばれる一時的に記憶できる情報の量を強化することができる。既にシードラウンドで$3.1M 調達しており現在は β テスト版をホームページで募集している。パッチは1つ 5 ドルで、高めのコーヒーと同じくらいの価格で量産を目指している。

humm

 

業界Neurotech
本社アメリカ・カリフォルニア州バークレー
設立日2017 年
従業員数1 - 10
資金調達状況シード
合計調達額$3.1M
投資家数12
推定収益$10M - $50M

 

さいごに

今回は Cognitive assessment & enhancing(認知機能の評価と向上)の技術を応用した Neurotech スタートアップ 5 つを紹介した。調達状況はシードからシリーズ C まで幅広く、今後もこの技術を使ってさまざまな業界でスタートアップが生まれてくるだろう。また今回紹介した企業がどのような Exit を迎えるのか、NeurotechJP は引き続きこれらの企業を追いかけて行きたいと思う。

ライター

Shoka Kadoi